学校支援に関するコーディネートは御用聞きと押し売りの姿勢で



 ただいまそれぞれの学校(上益城地域:甲佐小学校・矢部小学校・益城中学校 宇城地域:網田小子ども教室・鶴城中校区学校支援本部事業・不知火中校区学校支援本部事業・小野部田小放課後子ども教室 天草地域:志岐小学校・御領鬼池小・姫戸小・二江小)からすばらしい実践をお聞かせいただきました。それぞれの学校の実践については、皆さんそれぞれに学ばれたことと思いますので、各学校の発表についてのコメントは差し控えさせていただきます。
 まとめに換えて、私が学校応援団活動について日頃思っていますことを2点お話ししたいと思います。
 まずはじめに、地域と連携した学校教育の展開を生涯学習の視点から考えてみます。
 皆さんご存じの通り生涯学習は、1965年(昭和40年)フランスのポール・ラングランが提唱したものです。当時、日本には生涯教育という言葉で紹介されました。ユネスコの「生涯教育」論では、「lifelong integrated education」という用語が用いられていました。日本では、「ライフロング(lifelong)」が強調され、生涯教育を生涯にわたる教育として広まりました。「インテグレイティッド(integrated)」がやや欠落していました。「インテグレイティッド(integrated)」とは、統合するという意味ですね。教育を人々が生活している時間と空間、つまり縦軸と横軸から統合的に見ていきましょうとの考えです。
 縦軸は、教育を小学校期・中学校期と細切れに見るのではなく、生涯にわたった教育活動としてとらえ直しましょうという考えです。横軸は人々の生活範囲です。学校、家庭、地域、職場とこれまた細かく分けるのでなく生活空間を統合してみていきましょうとの考えです。このような考えから学校と家庭・地域の連携が重視されるようになりました。幼保小中高連携になっていきました。
 このような観点から、地域の支援による学校挙育活動を見直すことも必要かなと思います。
 次に、生涯学習の視点から知の総合化を図り、子どもたちの生きる力を育むことについて述べます。
 皆さんは、万葉集にあります 柿本朝臣人麿の和歌   
   東の 野に炎の立つ見えて かへり見すれば 月傾きぬ
を、ご存じと思います。
 この和歌は、文武天皇がまだ軽皇子といわれていたころ、父の草壁皇子のご逝去ののち、大和の阿騎野に遊猟され、生前ここで狩猟された父を偲びながらこの野に宿られたときの皇子の心を汲んでお供に従った柿本人麻呂が詠んだものです。
 この和歌が6年生の国語の教科書に掲載されていたことがありました。和歌の意味も教科書に記してあったそうです。6年担任のK先生は、「こんなすばらしい和歌を何度か読んでお終いにするのはもったいない。この和歌に詠まれた情景を絵に描き表してみよう。」と提案されたそうです。
 子ども達は、「東の 野に炎の立つ見えて」から東の方の情景を山の端から今まさに陽が昇ろうとしている情景に落ち着いたそうです。
 西の空の情景については、「かへり見すれば 月傾きぬ」を手がかりにそれぞれ、月が西の空に沈もうとしている絵になったそうです。ところがその月たるや、三日月がある、上弦の月・下弦の月がある、満月があるでそれぞれが自分の思いを話し、なかなかまとまらなかったそうです。
 子どもたちがいろいろ議論するがなかなか一つにまとめることができなく、時間がなくなったところで、一人の子が「この月と太陽の勉強は4年生で習ったような気がする。明日4年生の理科の教科書を持って来て調べてみよう。」と提案したそうです。
 翌日、4年生の教科書をもとにいろいろ調べていると、東の空に太陽が出始める時間に西の空に浮かぶ月は満月しかないという結論に達したということです。
 国語の和歌の学習を通して、歴史を学び、理科の学習を復習し、和歌に詠まれた情景を絵に表す、まさに知の統合です。
 過去の学習で学んだ知識や技能を本時の学習に生かすことは、生涯学習の大きな視点です。学ぶべきところがあります。
 益城町では、公民館講座で学んだ知識や技能を活かして学校応援団活動に取り組んでいる人が大勢います。そろばん、習字、陶芸、絵手紙、水墨画などの知識や技能を子どもたちの学習支援に役立てています。
 次は、学校応援団活動を充実させるための本日お集まりの皆さんへの期待です。本日は、コーディネーターの方、学校の生涯学習推進担当者の先生、学校支援ボランティア活動をしていらっしゃる方、学校教育行政に携わっている方がおいでています。
 私は学校支援活動がますます充実するためには、皆さんが地域や先生方に御用聞きと押し売りになることだと思っています。
 御用聞きについてです。先生方に、「誰かがこんなことをしてくれたり、教えてくれたり、協力してくれたら授業がもっと楽しくなったり、子どもたちの力がつくけどなと思っていらっしゃることはありませんか?」と先生方のニーズを掘り起こすことです。地域の方には、「学校支援できることはありませんか?野菜づくり、花作り、民話を語る、戦争体験を語るなど先生方がそのような方を求めています。」など人材を発掘することです。
 押し売りとは、先生方に「地域にはこんなことができる人がいます。」「この学習の時、地域のこんな方の協力をお願いしてみませんか?」などと先生と地域の方との協働指導を提案することです。コーディネーター(生涯学習担当者)は、
 そのためには、国語や算数・数学、総合的な学習の時間などの年間計画や指導書に目を通してより多様な学習が体験で生きるようなことを提案することです。そして、学校支援活動を、点から線へ、線から面へ、面から学校の組織として継続的・計画的に行えるようにしていきたいものです。
 終わりに桃太郎の話をします。桃太郎は鬼ヶ島の鬼退治に、キジとサルとイヌを連れて行きました。 キジは、空高く舞い上がって上空から鬼ヶ島の情報を収集しました。
 サルは、キジが集めた情報を知恵を働かせて分析し、鬼退治の戦略・戦術を練りました。
 イヌは、サルがたてた戦略・戦術に従って 鬼と闘い鬼を退治しました。
私たちは、アンテナを高くして学校支援に関する情報収集力、情報の分析・活用力、そして行動力を持ちたいものです。
 ますます学校支援活動が充実しますようにみんなで頑張りましょう。